2020年12月にトライアル公演という形で、長野県茅野市にある文化複合施設「茅野市民館」で上演された舞台作品「鏡のなかの鏡」の演出、キャストを大きく練り直して制作され、2021年11月2、3日に上演された「鏡/MIROIRS」の制作レポートである。大きく変更されたとは言っても、むしろプロットは2020年の公演に向けてピアニストの福井真菜さんとともに準備していたものであったが、主演を務める平山素子さんが外反母趾の手術後であることもあって断念したプロット・演出を復活させ、結果、足掛け2年を費やし越境芸術作品として制作された本作品は、ピアノの生演奏、コンテンポラリーダンス、そしてデジタルアートとともに立体音響および8Kプロジェクションを演出に加えて上演された。Maurice Ravelの組曲を用い、「音楽の視覚化」をコンセプトに据えた作品制作は「マ・メール・ロア」に引き続き2作目となり(実質3作目)、単に目で見える形にして示すことを指すのではなく、音や、匂い、手触り、質感、出来事、時間の推移など、総合的なイメージを伴う「情景」あるいは「ヴィジョン」を展開することを指して用いている。
Maurice Ravelの組曲「鏡」を基に制作された本作品のメインキャストには、静謐さと昂揚を自在に奏でるダンサーとして観客の熱い支持を集め、また振付/演出家として多数の作品を世に送り出してきた平山素子さん、ピアニストには数々の国際フェスティヴァル、コンクール等での公式伴奏員、パリを拠点にヨーロッパ各地でリサイタル、室内楽を中心に演奏活動を行い現代音楽にも意欲的に取り組んできた福井真菜さん、主要クリエイティブスタッフには、プログラミングによる表現で、国内外問わず、Kezzardrix名義で様々なアーティストのライブビジュアルやMVを手がけ、アルスエレクトロニカでの受賞歴を持つ神田竜さん、衣装デザインは数々の映画、ダンス、ミュージシャンなどの衣裳を手掛け、昨年のオリンピックの開会式では森山未來のパフォーマンス時の衣装デザイナーを務めたスズキタカユキさん、照明デザインには、アートコレクティブ「Dumb Type」のメンバーとして舞台作品に関わり、自身の作品制作、国内外の舞台作品への参加に加え、Perfumeのコンサートの照明デザインやライゾマとのコラボレーションなどでも注目を集める藤本隆行さんを招いての制作となった。プログラムと対応する楽曲は以下のとおりである。